いぬ・ねこ 再生医療認定病院
IWAMOTO ANIMAL CLINIC
イワモト アニマル クリニック
腎臓病のお話
腎臓とは
血液から尿を作り体の中で不要になった老廃物や毒素を尿中に排泄し、
ナトリウムやカリウムなどの血液中のイオンバランスをたもつ。
血圧を調整したり、ホルモンを分泌し血液(赤血球)をつくる。
などの働きを担っている臓器です。
慢性腎臓病とは
慢性腎臓病は、特に中高齢の犬や猫によくみられ、
腎臓の機能が徐々に低下してしまう病気です。
慢性腎臓病により腎臓の機能が低下すると、
重度の脱水や尿毒症(毒素が尿中に排泄されず体内に溜まる病態)を起こし、
生命を維持することが難しくなってしまいます。
慢性腎臓病においては数ヶ月にわたり徐々腎臓の機能が低下することと、
腎臓の約75%の機能が失われるまで症状が現れにくいため、早期発見は困難です。
来院された際には既にかなり進行した状態であるケースも多くあります。
共通するのは慢性的にじわじわ進行するということです。
腎障害が進行し、腎臓から尿への老廃物の排泄がうまくいかなくなると腎不全、
さらには尿毒症を引き起こし、最終的には死亡してしまいます。
一度悪くなってしまった腎臓の組織は治療しても元には戻りません、
なるべく早期に発見して進行を遅らせるような治療をするのが重要となります。
原因
犬と猫の慢性腎臓病の原因は、加齢に伴う腎機能低下線維化(臓器が硬くなること)、 品種による遺伝的要因、細菌や猫伝染性腹膜炎(FIP)などのウイルスの感染による腎炎、
結晶や結石などによる尿路の閉塞、免疫機能、腫瘍、他の病気の合併症などがあります。
慢性腎臓病を超す可能性のある原因疾患の例:
(糸球体腎炎、アミロイドーシス、腫瘍、腎結石、腎低形成、多発性嚢胞腎、中毒など)
犬の場合は糸球体(毛細血管の塊で、老廃物をろ過する部位)の破壊が多く、
猫の場合は間質(糸球体や尿細管の周囲)の障害が多いです。
しかし、実際に原因がわかるケースはあまり多くなく、ほとんどの犬や猫の慢性腎臓病の原因は不明です。
慢性的な疾患を有する腎臓ではじわじわと腎機能の低下が進行し、
腎臓組織の代謝機構が働かなくなった結果、慢性腎臓病の状態に陥ります。
症状
慢性腎臓病の初期段階ではあまり症状はみられませんが、腎臓の機能が徐々に低下してくると、
多飲多尿(尿量が多く、色や臭いが薄くなってきた)、
脱水、食欲低下、何となく元気がない、食べているが痩せてきた等の症状を示すようになります。
病気がさらに進行すると、嘔吐や下痢などの消化器症状、重度の脱水、食欲の廃絶、体重減少、
飲水量と尿量の低下、口腔潰瘍、貧血がみられるようになり、
末期には尿毒症により痙攣を起こすこともあります。
診断方法
慢性腎臓病は、血液検査、尿検査、エコー検査、レントゲン検査などで診断を行います。
血液検査
慢性腎臓病の場合、尿素窒素(BUN)・クレアチニン・リン・カルシウム・SDMAなどの数値の上昇や、
電解質バランスの崩れがみられます。白血球や赤血球の値により感染や貧血の有無も確認します。
近年、腎臓病の早期発見に役立つバイオマーカーとして、犬・猫ではSDMA(対象性ジメチルアルギニン)や、
犬ではシスタチンCも、腎臓病の障害を調べる指標となっています。
クレアチニンよりも早く上昇が認められる点と、食餌内容や筋肉量の影響を受けにくいというのも
早期診断に役立つ理由です。
エコー検査、レントゲン検査
腎内部の形態学的変化(大きさや内部構造、腫瘍はないかなど)を確認します。
また、尿路閉鎖の際は尿管や尿道に詰まった結石を発見できます。
治療方法
残念ながら慢性腎臓病により一度壊されてしまった腎臓の組織が、
治療により回復することはありません。
治療の目的は、症状を緩和させ、腎臓の負担を減らせる、
血液中の老廃物や毒素を体内に溜めないようにする事、そして進行を緩やかにする事です。
対象支持療法は残存する腎機能の保存、尿毒症の緩和が目的になります。
できるだけ生活の質を上げ、愛犬、愛猫が快適に過ごせるようにしていきます。
慢性腎臓病の治療では、血液中の老廃物やリンなどの蓄積をできる限り少なくするため、
腎臓病用の療法食に切り替えることが推奨されています。
また、慢性腎臓病の場合食欲が低下していることも多いので療法食が難しいことも多く、
活性炭やリン吸着剤等の内服薬やサプリメントを併用することもあります。
そして、病状の進行に伴い、脱水が重篤な場合には輸液を、血圧が高い場合には降圧剤を、
尿タンパクが出ている場合は投薬や食餌療法を、貧血がみられる場合には
貧血の改善薬(エリスロポエチン製剤)を、嘔吐が多いなら吐き気止め等を、
食欲が低下した場合には食欲増進剤など、各症状に適した治療を行っていきます。
慢性腎臓病は治る病気ではなく、一生付き合わなくてはならない病気です。
動物にとっても、飼い主様にとってもストレスにならないように必要な治療・ケアが必要となります。
慢性腎臓病は、特に高齢の猫では3頭に1頭、
犬では10頭に1頭の割合で発生する病気です。
初期の段階から適切なケアを行うことで、寿命を延ばせるかもしれません。
予防法やご家庭での注意点
慢性腎臓病の明確な予防方法は無く、年齢と共にリスクが上がる病気です。
定期的な健康診断を受けることで、初期段階の慢性腎臓病を早期に発見できる可能性があります。
日頃から水を飲む量や尿量、色や臭いをチェックすることも、早期発見につながる可能性があります。
血液検査異常より尿検査異常の方が早期に検出されますので、
日頃から尿の状態を気にしてあげていれば早期発見につながります。
腎臓病の動物は【多尿】になるため、脱水しやすく補うために【多飲】になります。
脱水させないことが腎臓病のケアの基本になります。
またフードやおやつの表示をよく読んで、良質なタンパク質を適量摂取し、
ナトリウムやリンの含有量の多い食品はなるべく常食させないようにしましょう(例:練り物、煮干しなど)
慢性腎臓病にかかってしまった場合には、
定期的な検査を受け、各段階に合わせた適切なケアを行っていきましょう。
ステージ1
初期の腎臓病。症状はほとんど現れないため、血液検査・尿検査だけでは見落とされる可能性がある。平均生存期間は400日以上。
ステージ2
軽度の慢性腎臓病。ステージ1と同じ無症状もしくは、食欲不振や無気力状態になることがある。平均生存期間は、200〜400日程度。
ステージ3
中等度の慢性腎臓病。断続的な食欲不振、毛並みの変化、嘔吐/下痢、無気力、血尿などの症状が見られることが多くなる。平均生存期間は、110~200日程度。
ステージ4
末期の腎不全。ステージ4のほとんどの犬は、これまでに挙げたすべての症状が現れる。最悪の場合には、わんちゃんをこれ以上苦しませないように支持療法(緩和ケアのようなもの)をすることが多い。平均生存期間の中央値は14日~80日。
ステージ1
症状は全くみられず、血液検査でも異常値は見つかりません。
尿検査で尿比重の低下や蛋白尿、腎臓の形状の異常が認められることがあります。
ステージ2【再生医療適応】
慢性腎臓病で最初に見られる症状である「多飲多尿」が起きるようになります。
腎機能が低下してくると尿を濃縮できなくなるため、薄い尿を大量にするようになります。
そのため水分不足になり、水をたくさん飲むようになります。
このステージでは、まだほとんどの子で元気・食欲が普通にあり、なかなか異常に気付かないことがあります。
しかし、腎機能は正常の4分の1にまで低下しています。
この段階では体調維持に必要な腎機能が残っており、再生医療により腎機能低下の進行を抑える効果が期待できます。
ステージ3【再生医療適応】
さらに腎機能の低下が進むと、老廃物などの有害物質を尿中に十分排泄することが出来なくなるため、尿毒症を発症し始めます。
血液中で高濃度になった有害物質により、口腔粘膜や胃粘膜が荒れて、口内炎や胃炎になりやすくなります。
食欲の低下や嘔吐などの症状が表れ始めます。
加えて、血液検査で腎機能の指標となる数値である、CRE(クレアチニン)、BUN(尿素窒素)の上昇がみられるようになります。
CREやBUNは、本来は腎臓から排泄される老廃物ですが、腎機能の低下により尿中に排泄することが出来なくなってしまうため、血中の濃度が上昇します。
また、腎臓は赤血球の成熟に必要なエリスロポエチンというホルモンを分泌しています。
慢性腎臓病になるとエリスロポエチンを正常に分泌することが出来なくなるため、貧血が起きることもあります。
この段階では生命維持に必要な腎機能が残っているため、再生医療により慢性腎臓病の進行を遅らせ、QOL(生活の質)の維持・改善が期待できます。
ステージ4
重篤な臨床症状がみられる時期です。
尿毒症がさらに進行し、積極的な治療なしでは生命維持が困難になります。